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第廿二話 〔最終話〕スーパーペーパーフラっと

Author: 憮然野郎
last update Last Updated: 2025-06-09 19:05:40
前回のあらすじ:

【王国の玉座前で始まった謎の決闘。姫の掛け声と共に始まったのは、まさかの「ラジオ体操アルティメットリミックス」。

太一はウラ拍やオモテ拍のリズムに翻弄され、混乱の渦に巻き込まれる。

一方、余裕の青年は完璧な動きでリズムを制圧する。

しかし、カエルの謎のボーカルが入り乱れ、さらに状況はカオスにな展開に。

ミスを検知する審判・ボム師範の厳しい目が光る中、追い詰められた太一は突如覚醒。何かしらの謎の力により、完璧な跳躍とリズムの波動を掴み、カエルのテンポさえもシンクロ。

その瞬間、場の空気が一変し、観衆は息を呑んだ。

太一の動きに合わせて床が共鳴し、リズムの波が王国全体を揺るがす。

青年も動揺しながらも全力で応戦し、激しい応酬が続く。

最後の決め技が炸裂し、太一は完璧な着地を決める。

ボム師範の「勝者、太一!」の宣言とともに、王国中が歓声に包まれた。】

「僕ね……実はずっと、遥音ちゃんに言いたかったことがあるんだ」

太一は、小さく震える声で言葉を紡ぐ。

「僕は……あの時、君を傷つけた」

遥音は、ゆっくりと目を伏せる。

「私も……太一君を傷つけた……」

いや違う――。

「僕は……僕は、君にちゃんと謝らなかった」

遥音の瞳が潤む。

「私も……ずっと謝りたかったの……」

二人の心が、静かに重なる。

幼い日の記憶が、ゆっくりと巡り始める――。

僕たちは、ずっと一緒だった。

夏の日、木陰で並んでアイスを食べたこと。

「ちょっと溶けてるよ」

遥音が笑いながら言ってくれたこと。

春の日、桜の下でお互いに夢を語ったこと。

「僕たち、大人になったら、どんな風になるのかな?」

僕は、何も気にせず「楽しい人生を送りたい」と言った。

でも、遥音は。

「私は……ずっと、太一君のそばにいたい」

あの日の言葉が、今になって胸に刺さる。

そして、最後の日――。

「そんなの、知らない!!」

遥音は怒っていた。

「だったら勝手にすれば?」

僕も、彼女に冷たく言い返した。

あの日、僕は何も知らずに、何も考えずに言葉を投げた。

遥音は、小さく眉をひそめていた。

でも――

それが、彼女と最
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